【aspara】雪上散歩で自然の驚異を見聞きしてきた | 北軽井沢ひろば

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雪上散歩で自然の脅威を見聞きしてきた

【aspara】雪上散歩で自然の驚異を見聞きしてきた その2

2010.01.28更新

← その 1

ほうのき

木は、仲間の木に呼びかけるか──妖怪ホウノキ

「この木は非常に原始的な木で、ホウノキといいます」
 堀江さんが指し示す木は、名前は知らなかったけれど見たことはありました。
ホウノキ
←写真がマズくてすみません。
「これ、葉っぱの大きい木ですよね」
 わたしがいうと、堀江さんはうなずきます。
「そうですね。ホウノキの葉を料理の皿のように使う地方もあります。この木は白い花をつけるんですけど、ご存知でしたか?」
「いやぁ……」
 わたしは知りませんでした。堀江さんによりますと、ホウノキの花があまり目立たないのは、ひとつに大きな葉がしげって、花を隠してしまうため(開花は初夏)。もうひとつに、花が上を向いており、地上からは見づらいことが原因だそうです。
 ホウノキは花を上にむけて咲かせます。これは空を飛ぶもの──ハチなどへアピールするためです。蜜を吸いにきたハチに花粉を運んでもらうのが狙いです。
 首尾よくオシベの花粉をハチに付着させた後、ホウノキは驚くべき変貌を遂げます。
 花をしぼませて、今度はメシベを発達させて咲き変わるのです。男から女へ変わるみたいなもんでしょうか。すごい荒わざです。「原始的な植物」と最初におっしゃった意味がわかるように思いました。

「花粉をつけたハチが、メシベに戻ってくれば受粉成功ですけど、これ、リスクがあるんです」
 性別を変えるくらいですから、咲き変わりには時間がかかるのでしょう。咲き変わったとしても、ハチが必ず戻ってくるとは限りません。
「でも、不思議なんですよねー」
 堀江さんが目を細めて語るには──。

ホウノキの実
ホウノキの実も原始的な姿をしている。

 ホウノキの近くに、別のホウノキがあった場合、雄花と雌花に咲き変わる順番は、同じ性別でかぶらないよう、入れ違いになるそうです(雄花・雌花という言葉が正しいかわかりませんが)。
 雄花→雌花のパターンで咲くホウノキがあったとして、その近くにある別のホウノキは、必ずといっていいほど雌花→雄花のパターンで咲く。ご近所同士で、おぎないあって、ハチを逃さないよう工夫している。
 思わずうなりました。
「あたかも木がコミュニケーションをとっているような」と堀江さんがおっしゃいましたが、まさしくそれです。
 仮に雄花を先に咲かせる A パターンと、雌花を先に咲かせる B パターン、両方の遺伝子をホウノキが備えていたとして、どちらを発現させるか決定するものは何なのでしょう。ご近所同士でのタイミングはどのように計られているのでしょうか。
 花が発する匂いはどうか。いや、樹木にそれを感知する器官があるとは思えません。
 根から変な成分でも出しているのでしょうか。しかしその成分は100メートル先のホウノキに届くのでしょうか。
 この謎、正確なところはわかっていないそうです。

 人も動物も寝静まった真夜中、古くなりすぎて喋るようになったホウノキが、仲間に呼びかける。
 などと想像しながら先へ進みますと、堀江さんは道から外れた森の中を案内してくれました。
 そこは動物たちの道でした。

アシアト

キツネが化かされる話──ウサギの止め足

 森へ入るといきなり足跡に遭遇します。
 奥へ進み、浅い谷のようなところを降りると、そのには数種類の足跡が入り組んで続いていました。動物たちの大通りです。
 堀江さんはどの足跡を見ても立ちどころに何の動物かを当ててしまいます。わたしはここで、数種類の足跡の特徴を教えてもらいました。イノシシとキツネの足跡なら見分けられる眼力はついたと思います。
 いろいろ面白いお話をうかがいましたが、なかでもウサギの足跡は興味深かったです。写真がうまく撮れず、絵で恐縮ですが、ウサギの足跡はわたしにはこんなふうに見えました。↓
ウサギの足跡
 図のなかの右上の囲みが足跡の形状です。
 ウサギの足跡は面白くて、飛び跳ねて着地するとき、後ろ足が前足より前へ出るのです。
足跡解説
 前方に横並びになった細長い部分が後ろ足、縦に行儀よく並んだ小さいのが前足、ということになります。
 これは、実物を見ると本当に可愛らしく、いかにもピョコタンピョコタンしてる様が目に浮かびます。

 真冬、こんな可愛い痕跡を雪上にてんてんと残していたら、腹をすかせたキツネが黙ってはいません。特徴あるウサギの足跡はごちそうへの道案内となり、若いキツネなどは一心に追いかけるでしょう。
 ところがキツネたちは、ウサギの痕跡が煙のように消える事態に遭遇し、戸惑うことになります。
 ウサギのトリックにかかっているのです。

ウサギの止め足

 ウサギは進行方向に対して、直角に方向を変えるのだそうです。ある程度、横に進むと、今度はきた道わずかに引き返し、ふたたび進行方向へ向かう。
 これを繰り返すことで、追跡者を撒いてしまうのだそうです。
 これを「ウサギの止め足」というそうで、ずいぶん単純な方法ですが効き目はあります。老練なキツネはそれでも追ってくるそうですが、多くのキツネは途切れた箇所で足跡を見失ってしまいます。

 ウサギも馬鹿になりません。人間のいないところで、痕跡だけを使って見えない相手をだますサバイバルをしていたのです。食う方、食われる方、互いに必死になって生まれた高度な駆け引きなのだと思います。

リス

アカマツのエビフライ

 最後にもう一つ。
 アカマツの木のしたにきたとき、散乱した木の破片のようなものを堀江さんが説明してくれました。
「これはマツボックリのカサです。リスやムササビが、マツボックリからマツカサを剥ぎとって、種を食べるんですよ」
 カサをすべて剥ぎ取られたマツボックリはどうなるか、堀江さんがリュックから袋を取り出してみせてくれました。
森のエビフライ
 これはわたしが拾ってきたものです。
 色といい形といいエビフライに似ていることから、堀江さんはこれを「森のエビフライ」と呼んでいます。
「この辺にも落ちてるはずですよ。同じものを探してみましょう」
 と、いわれたので探し始めます。これくらいはすぐに見つかるだろうと、あちこち探すのですが、見つからない。目を凝らしても見つからないのです。
「アカマツの下をよく見るといいですよ」
 と助言されて、ようやく散らかったマツカサの近くにひとつ見つけました。すると、なんのことはないそこら中、エビフライだらけなのに気づきました。
 おそらく、目がなれたというか、脳にエビフライが刻まれたのだと思います。たちまち十数個ひろってしまいました。
 このエビフライ探し、お子さんは夢中になるそうです。

 が、思うに、堀江さんの狙いはそれ以外にもあったろうと思います。というのも、トレッキングツアーを終えてうちに帰ってくると、わたしは即座にエビフライを見つけたからです。近くにアカマツがあるといえばあるのですが、「こんなところに」と思わされる場所に落ちていて、リスがひと気のない早朝、マツボックリをかじるイメージが頭に浮かびました。
 堀江さんの説明を聞いて、エビフライ眼を身につけていなければおそらく見向きもしなかったに違いありません。
 エビフライを知れば、リスやムササビの知られざる行動がわかる、というわけです。

おわりに
 今回のリポートはこれで終わりです。
 すべてのお話を紹介できたわけではありません。イノシシとシカでは、足跡にどんな違いがあるか。リスの巣はどのようか。リョウブの木とはどのような字を書いて、なぜそう呼ばれるか。
 おそらく、わたしも聞いていない話がまだまだあるのだと思います。
 エビフライ探しのあと、休憩をとり、おいしい紅茶をいただき、山のことを教えてもらい、また見晴台で浅間山を見ました。いろいろな話をしました。

 最初に申しました通り、北軽井沢は高原です。にもかかわらず、いかにも高原然とした浅間牧場が見過ごされがちなのは残念なことです。興味のおありの方はいらしてください。わたしもまたトレッキングツアーに参加します。
 豊かな自然、といわれるときの、「豊かさ」というのが、堀江さんの説明を聞くとわかるような気がします。

雪玉の道具

 ちなみに、asparaさんではトレッキングツアーだけでなく、ソリをはじめとした雪遊びができます。
 左の写真は雪玉を飛ばす道具。はじめて見ました。